さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学




2009/07/25:例が分かりにくいものがあったを修正
2009/07/25:良かった!を修正
2009/07/25:DATAを修正


会計は千を超える専門用語いっぱいの難しい分野。それを、さおだ
け屋はなぜ潰れないのか?あの人はなぜいつもワリカンの支払い役
になるのか?など身近な疑問から考え、会計の本質を大まかにでも
つかみ、会計を身近にする会計入門書。
会計に限らず、日々の生活にも役立ったり応用できたりする知識も
多く紹介している。

「本当の会計入門書を作るために、会計の常識からいっ
たん離れよう」と。
そして、今回、次のルールを自分に課しました。

  • 日常の気になる疑問から話をはじめる
  • 会計の説明も教科書的な順番を取らない
  • 生活でも役立つような身近な知識も入れる


プロローグ どうして「会計」はむずかしいのか? 6Pより

DATA

さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)
さおだけ屋はなぜ潰れないのか?
身近な疑問からはじめる会計学(新書)
著者:山田 真哉
出版社:光文社
発売日:2005/2/16
読書所要時間:約3時間
ブックオフで105円で購入
参考サイト
サイト:公認会計士 山田真哉工房 〜『女子大生会計士の事件簿』公式サイト〜



良かった!

  • 笑える
  • 章ごとのまとめ、用語辞典や索引など新書らしからぬサービス
  • 会計を踏まえた、目標を達成すること自体に意味はないの話

イマイチ!

  • 素晴らしかったのは2/7エピソード
  • 時々、説明が急ぎ足だったり、話があっちこっち乱雑になる
  • 頻繁する自著の宣伝が鼻につく

この本は、身近な疑問をエピソードとして、会計の知識や考え方と
関連付けて説明している。最初のエピソードはタイトルにもなって
いる「さおだけ屋はなぜ潰れないのか?」このエピソードと次の
「ベットタウンに高級フランス料理店の謎」は秀逸で、身近な疑問
からその解決が見事に会計と合わさっている。また、笑える部分の
おかげもあって、がんがん読み進めれそうなテンションになる。

もちろん、焼きイモや豆腐、野菜は食べ物であって、さ
おだけとはまったくタイプが異なる。そもそも焼きイモ
などは、「あっ、なんか食べたい!」「今日のおやつに
いいかも!」と思ってなかば衝動的に買うものだ。でも、
「あっ、なんか干したい!」「今日の洗濯にいいかも!
」と思って、衝動的にさおだけを買うような人はいない
だろう。


エピソード1 さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 21Pより

序盤のこの部分は笑ってしまった。
この笑いの部分が上手く入っていれば、文章にメリハリがつき、真
面目な話や難しい話でも、難なく読ませる要素になる。非常に効果
的になものだと思う。
書き手としては、上手く笑える部分を入れるのは簡単ではないだろ
うから、すごい事だとも思う。
ちなみに、ここで笑う自分がレアケースじゃなければ、良いのだけ
れど・・・。


しかし、身近でそこまで会計と良く合う事例もそうそうなかったの
か、残念ながら、エピソード3からの5つのエピソードはあくまでき
っかけといった体で、会計の話をする形になっている。
といっても、色々な会計の知識を分かりやすく説明してあるし、日
常で役立ちそうな内容も多い。
会計を踏まえた、目標を達成すること自体に意味はないの話が印象
的だった。

このチャンスロスの考え方は、なにも商売に限ったこと
ではない。日常生活でも、この考え方を生かしたほうが
得なことがたくさんある。
−中略−
目標の設定値が低いと、どうしても途中で「これくらい
でいいか」と思ってしまう。これは、自分ではある程度
はやったつもりでいるからプラスだと思うかもしれない
が、会計的にいうと明らかなマイナスなのである。
−中略−
「勝ち負け」とか「達成した・しない」といった考え方
ではなく、はたして自分の目標設定が妥当だったのかど
うか、という観点で考えてほしい。目標を達成すること
自体にそれほどの意味はなく、そもそも単に目標が低か
っただけなのかもしれないのだ。


エピソード4 完売したのに怒られた 103〜104Pより

目標を立て、それを目指す事が立派な事なのは間違い。しかし、そ
れが妥当だったかどうかまで見るべきというのは、手厳しいが分か
る話でもある。
誰でも、立てた目標は達成したい。だから、知らず知らずの内に低
い目標になっている可能性はあるし、低い目標であっても、そこま
で頑張ったのは変わらないといって納得しがちだと思う。
それが、会計的な考え方も持って、機会損失でプラスではなくマイ
ナスと突きつけられれば、目標を立てる時や達成した時の見方も変
わり、より高いものにつながっていきそう。
また、目標を達成すること自体にそれほど意味はないという考え
も、目標を達成できなくても落ち込まずに済み、適当な高い目標を
持つ手助けになると思う。


例が分かりにくいものがあった

基本たくさんの具体例で分かりやすい内容だけど、途中で説明した
い事が多すぎるのか、もっと丁寧しないと分かりにくいかな?とい
う部分もあった。

単価が高いと売り上げや利益計画がブレやすいというこ
とだ。たとえば、単価10万円の商品があったとするなら
ば、月に10人くらいに売れば利益を出せるだろうが、も
しかしたら5人しか売れない月もあるかもしれないし、
次の売り上げがゼロという可能性もないわけではない。


エピソード5 トップを逃して満足するギャンブラー 137Pより

この例えで、売り上げがブレやすいということがすんなり理解でき
る人は、稀だと思う。ここは、回転率の説明で、単価が高い場合の
デメリットの話なのだけど、それなら、単価が低く回転率が高い場
合と対比した例にした方が分かりやすいのではないだろうか。


たとえば、単価10万円で月100万円を売り上げる商売と
単価100円で回転率が高く同じく月100万円を売り上げる
商売があるとする。もし、その月たまたまお客さんが10
人少なった場合、単価が安い方は売上1000円減で済むが、
単価が高い方は売上ゼロになってしまうのである。


なるべく文字数をキープしたまま変更するならこんな感じでどうだ
ろうか(さすがに、同じ文字数以下はできなかった)。


つまり、


単価10万円 × お客さん10人 = 売上100万円


単価100円 × お客さん1万人 = 売上100万円


どちらも、お客さん10人減する


単価10万円 × お客さん0(10 - 10)人
= 売上0円 (売上-100万(0円 - 100万)円)


単価100円 × お客さん9900(1万 - 10)人
= 売上99万9000円 (売上-1000(99万9000 - 100万)円)


極端な例だが、単価が高いとブレが大きいのは伝わりやすくなった
と思う。

ということで

この本は、会計興味あるから−とか、タイトルに惹かれる−とか
で、頭から順番に読むより、まず、

在庫があるとなぜ損をするのか?/カンバン方式はなぜ
すごい?/財務部をバカにしてませんか?/「手形って
なに」と聞かれたら答えられる?/無利息でお金を借り
る敷居調達法

目次より

といった目次の各節の題名(トピック)の眺め、これどういうことだ
ろ?と思った部分を無作為に読むのが良さそうだ。
そういう意味では、会計用語辞典や索引が付いているので、手元に
置いて空き時間に興味のある部分を読んだり(用語辞典の気になっ
た単語を索引で探して、本文のその部分を読むとか)、1回読んだ後
も、各章のまとめを確認したりすると良く、またそれが出来る便利
な本だと思う。
その使える知識の数々を会得できれば、本文で5回以上、2か所(奥
付と裏表紙)の著者紹介で散々出てくる自著の紹介や話も気になら
ないだろう。


会計学の入門書と思わず、どんな人でも手にとってみて良いと思え
る本になっている。
読むと、今後の生活がより効率的になり、本の代金+ちょっと得に
なるかもしれません。