[なかなか]ゴーン道場


日産自動車社長カルロス・ゴーンが人育ての奥儀を披露。上司、部
下、新人、国際人、女性社員、家族、子ども、沢山のテーマで人育
て、良き付き合い方が語られる。

人を育てるのに、年齢は関係ありません。若い人にとっ
ても大切なのは、自分の存在が他者に違いをもたらすと
いうことです。

プロローグ 5Pより


新書
カルロス・ゴーン (著)
朝日新聞出版
2008/11/13
読書所要時間:約2時間30分


参考リンク
カルロス・ゴーン-Wikipedia




良かった所

  • 広く色々なテーマを取り扱っている
  • 具体的な妙案に感心できる
  • ゴーン家そのものに興味が持てる
  • 章ごとに重要な点を1ページにまとめている


悪かった所

  • 所々ある単語の英語表記はなんだ?と思う
  • 潤沢な資源があって出来そうな 敷居の高い案が見られる
  • 考えるプロセスは言語とは別という話が分かりづらい


ゴーン氏は、素晴らしいビジネス人なんだろうと思いますが、この
本の内容は、様々なビジネスシーンの話に留らず、それらに加え
学生時代、子育てや夫婦関係まで、人生の様々シーンの諸問題につ
いて1人の成功者の体験やノウハウを知ることができる本。
中には、モンスターペアレントの対処法は?といった話題もあり、
さながらゴーン先生の人生相談といった雰囲気の内容になってい
る。


この本でやや疑問の残る部分として、時々単語の後にかっこで、英
語表記がついている。これが何故ついているのかイマイチよく分か
らない。
モチベーション(motivation)、共感能力(empathy)、リンク(link)
など、ついてる単語も様々。これについては最初に意図の説明があ
っても良かったんじゃないかと思う。
モチベーション(motivation)、共感能力(empathy)については最初
にゴーン用語の基礎知識として、意味解説と索引があるが、他のた
くさんのそういう部分にはそういったフォローがなく中途半端。意
図がはっきりしなかった。


色々な問題に対する。対策方法が紹介されている中でも、これは良
い、具体的でいつかそのまま使えそうだと感心したものが複数あっ
た。
例えば「ダメ上司の気分を害さずに意見するには?」といった問題
に、

私なら上司に面談の時間をつくってもらいます。そして
自分を評価してもらう。「私の実績をどう思いますか」
と聞くんです。
中略
その機会をとらえて、「じゃあどのように支えてほしい
か言わせてください」と切り出す。自分自身の向上と置
き換えて、上司にメッセージを伝えるんです。
中略
自分に置き換えて言うんです。そうすると聞いてくれま
すよ。これは部下の成長の話で、自分への批判じゃない
のですから。

部下・上司を育てる 21〜22Pより

と、批判してはいけないというような方法はどこでも聞くが、それ
を踏まえてこれくらい具体的な方法が紹介されているのが良かっ
た。


もう1つ、

営業なのに自信が持てない人、いますよね。
中略
攻略法は二つあります。一つ目は商品について徹底的に学
ぶこと。営業担当者が仕事に自信を持てないのは多くの場
合、「自分が知らないことをお客様から聞かれたらどう
しよう」と思うからです。
中略
−二つ目は?
お客様について知ることです。
中略
−営業担当者は話下手でも務まりますか?
もちろんです。営業の仕事は商品やお客様に対する知識と、
彼らが求めるものを察知する能力が大事です。

ビジネスのプロを育てる 60〜62Pより

これも具体的で良い。


逆に、んー?と思う方法や話が無いとはいえないのだが。

実際に会うのが一番ですが、時間がなければテレビ会議でもいい。

ビジネスのプロを育てる 72Pより

1人でよいから、卓越した人間を加えることです。

ビジネスのプロを育てる 79Pより

この辺りは、資源の潤沢な組織などの上での考え方だなと思う。ミ
シュラン、ルノー、日産と大企業のみを渡り歩いてる方の考えなの
かなと。
続く説明にある、どれだけ会うことを重要視しているか。競争原理
を取り入れることで、全体のモチベーションを上げている。といっ
た意図を読み取れば良いのだろうけど、気になった。

−フランス語、英語、ポルトガル語など何ヶ国語も操る
ゴーンさん、考えるときはその国の言葉で考えるですか?

それはないですね、考えるプロセスは言語とは別の行為
だと思います。思考内容は体、言葉は洋服のようなもの
です。

国際人を育てる 95Pより

この部分は分かりづらかった、考えるのに言葉は必要ないとも取れ
るが、その意見には疑問符なので、考える行為は自分の習得してい
るいずれかの言語(全ての言語)で行うが、表現する時の言語はそれ
とは関係ない。と解釈したが。
さらに、続く聞き手の人が、

−話す言葉で気分や性格が変わることはないですか?
英語を話すとオープンに、フランス語はロマンチック
に、とか。

という頭悪そうな質問に続いたのが残念だった。考える
のに言葉は使ってないのですか?とか掘り下げて欲しか
った。

(教育について)
彼女は私よりタフですから、「君は厳しすぎる」「あな
たが甘すぎるのよ」しばしば議論になる。

家族を育てる 168Pより

−どの言葉を使いますか?
主に英語、それからフランス語ですね。夫婦で秘密の話
をするときはアラビア語(笑い)。

家族を育てる 169〜170Pより

など、奥さんもすごそうな人だな思って、ゴーン家そのものにも興
味を持たさせる内容だった。
「ゴーンさんのこれまで」に奥さんの著書「ゴーン家の家訓」も紹
介されている。


幅広いテーマが色々な立場の人がそれぞれ、自分にとって役立つノ
ウハウやヒントを獲得できる本だと思う。
各章の最後で、

部下の「モチベーション」を上げるための基本条件
1.共感能力を磨く。
2.コミュニケーションをとり、周りの状況を理解させる。
3.「あなたは重要だよ」と認める
4.結果に公正な評価を与える。
5.組織の将来について、明確なビジョンを打ち出す。

ビジネスのプロを育てる 60〜62Pより

という風に、その章の重要な点をまとめているのも、後での確認な
どに使えて良い。




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