とてつもない日本

えぬに評価

昨今、メディアからは格差社会少子化、教育崩壊など暗い話ばか
りが流れている。「日本はもうダメだ」と悲観にくれる私たちに日
本は本当に「駄目な国」なのかと、日本人の持つ素晴らしい文化、
国外での様々な実績や評価、諸問題への対策を提示する。
日本の底力を見つめなおし、「元気な日本」の未来を考える力がわ
く一冊。

DATA

新書
著者:麻生 太郎
出版社: 新潮社
発売日:2007/6/6
読書所要時間:約3時間
ブックオフで105円で購入
参考サイト
麻生太郎オフィシャルサイト
私たちのカンボジア法整備支援

とてつもない日本 (新潮新書)

良かった!

  • 日本へのポジティブな意見に力がもらえる

トヨタソニー、カラオケ、マンガ、ニンテンドー、J
ポップ……。「ノーキ」や「カイゼン」が、世界の経済
にどれだけ貢献しているか。インスタント・ラーメンや
カップ麺が、どれだけの人を救ったか。
 日本は、マスコミが言うほどには、決して悪くない。
いや、それどころか、まだまだ大いなる潜在能力を秘め
ているのである。


はじめに 14Pより

 かつて、あるイギリス人が「日本が不況だというなら、
その不況を輸出していほしいものだ」といったという。
外国人から見れば、九〇年代の日本ですら、どこが不況
なの?ということだったのである。日本への評価は、わ
れわれが思っているよりはるかに高い。そして潜在能力
も高い。


第五章 地方は生き返る 123Pより

  • 色々な国からの日本への賛辞の例を紹介

日本のODAを使って建設されたインドの地下鉄を訪問した時のエピ
ソードから。

我々がこのプロジェクトを通じて日本から得たものは、
資金援助や技術支援だけではない。
中略
日本の文化そのものが最大のプレゼントだった。


 はじめに 11Pより


U2のボノさんが安部晋三総理(当時)を訪問した時のエピソードから。

そのときボノさんは「アフリカの感染症問題に対する日
本の貢献について高く評価する。日本は約束したことを
必ず実行するとの名声が高い」とも言っていたのである。


 第一章 アジアの実践先駆者 30Pより

  • 政治に興味を持つきっかけになる

マンガの話などを交え、親近感を持って読める。官公庁のホームペ
ージを、こんな面白い記事があると紹介するうまさ。

イマイチ!

  • ニートも、捨てたもんじゃない論はよく分からない

スローライフの一種だ、くらいの余裕も持って認めてもいいのでは
ないか。では捨てたもんじゃないとは思えない。

  • 外交の話は、地図を交えるなどして欲しかった

たくさんの国が出てきて、よく分からなくなる。アジア諸国など。

  • 日本の政治家、官僚の力が見えない

日本の底(民)の力は分かった。でも結局お上が台無しにしてしまう
じゃないの?となってしまう。

印象的!

サッカーのワールドカップで活躍したフランスのジダン
やイタリアのトッティがインタビューで、「あなたは何
をきっかにサッカーを始めましたか?」と聞かれて、二
人とも同じことを言っている。
「きっかけは『キャプテン翼』だ」


第二章 日本の底力 60Pより

キャプテン翼が、たくさんのJリーガーやサッカー日本代表を生み
出すきっかけになっているとかのエピソードなら、分かるし、自分
の国のサブカルチャーすごいともいまいちならなかった。
しかし、ジダントッティが言ってるとなると説得力が違う。単純
に外国人の評価をありがたがっているように思えるかもしれないが、
ワールドカップで世界一になったサッカープレイヤーが二人も自分
の国のマンガ(アニメ)をきっかけにサッカーを始めたと言っている
のだから、これ以上の嬉しい賛辞はないと思う。

物価がさがっているから、実質的には可処分所得は増え
ている。ところが人間というのは不思議なもので、給与
が全く上がらないと気分が悪い。狂乱物価の時もそれな
りに大変だったのだが、給与が上がったから気がまぎれ
た。一方、給与が全く上がらないというのは楽しくない。
なんとなく気が晴れない。
 これがデフレの恐ろしさの本質ではないだろうか。

 第四章 「格差感」に騙されてないか 95Pより

デフレの恐ろしさとは、企業業績の悪化からのリストラやその恐怖
からの消費低迷といったものだけではない。なんとなく気が晴れな
い感という切り口は、斬新だと思った。
つまり、給与が上がっていれば、例え同様の物価の上昇で実質生活
は楽になっていなくても、単純に所得が増えた嬉しさや認められて
いる充実感で、元気が出る。逆に物価は下がっていても、給与が全
く上がらなければ、その停滞感に、知らず知らずの内に蝕まれ、元
気が無くなっていくというわけだ。


三人の日本人女性検察官がカンボジアの法整備の支援を行ったエピ
ソードから。

また、土地の不法占拠に対して「出て行け」と命じるま
では日本と同じだが、引っ越し先まで裁判所が決めてあ
げないといけないという慣習があったという。
 こうした違いに戸惑いながらも、彼女たちは決して
「日本流」を押し付けるのではなく、彼らなりの近代化
が進むよう、アドバイスを送ってきた。このホームペー
ジ(法務省)は、彼女たちの奮戦ぶりがよくわかり、大変
面白いのでぜひ読んでみていただきたいと思う。


第七章 新たなアジア主義−麻生ドクトリン 171Pより

法務省などの官公庁のホームページは普段なかなか見ようとは思わ
ないが、この紹介の仕方は興味が持てて良かった。
面白いので見てみて欲しいとは、ためになるからとか、重要だから
とかより、よっぽど惹かれる文句だと思う。少なくとも自分には非
常に効果があった。
この本では、他にも積極的に官公庁などのホームページの紹介をし
ていて、時代にマッチした政治普及の役割を果たしている。

まとめ

今度の2009年夏の総選挙、自民党マニフェストとこの本のコンセ
プトは驚くほど似ている。どちらも日本にはたくさんの良い所があ
り、それを伸ばすのが良い。もちろん、改善すべき問題にはきちん
と向かい合います。といったことである。
麻生さんが内閣総理大臣になってから、度々その発言のブレが問題
として取りざたされるが、根幹はブレていないことがよく分かる。
今度の総選挙に向けてオススメしたい一冊である。
民主党、鳩山さんの著書「鳩山家の使命―民主党鳩山由紀夫の夢
と構想」なども併せて読んでみてはどうだろうか*1

何より、「日本はもう駄目だ」という思いから、夢や希望も持てず、
不安だらけの毎日を送っている方にこそ読んでもらいたい。未来へ
の希望と力がわくに違いないだろう。



第92代総理大臣
日本の底力。見せます

とてつもない日本 (新潮新書)
麻生 太郎
新潮社
売り上げランキング: 518


新憲法試案―尊厳ある日本を創る
鳩山 由紀夫
PHP研究所
売り上げランキング: 247635

*1:絶版ぽいので手に入らないかもしれません